創造性の育成塾 有馬朗人塾長 講義検証①
やっと、有馬先生の講義をじっくりと見ました。
去年は“原発”に全く触れませんでしたが
今年ようやく「エネルギー問題を考えよう」です。
ギャーギャー文句言って来た甲斐がありましたね(笑)
で、ま、率直に言って、有馬先生ですからね。
山下俊一先生みたいに、突っ込んでくださいと言わんばかりの発言は
無いだろうなと思ってたんだけど…
ありますね。
じっくり見ると結構おかしな事なこと言ってる。
ということで、講義を見ながら検証していきましょう。
(講義全体の動画は創造性の育成塾 > 第7回夏合宿 > 授業レポートで見られます。
ここでは該当部分の動画を引用して説明します)
【世界の人口増とエネルギー不足】
(講義の動画 13:51〜)
「2035年、先進国の人口は今と変わらず10億だけど
中国・インドだけで30億になる。
彼らが先進国並みににエネルギーを使うようになったら、今の4倍要る。
他にもアフリカとか南米にも要る」
こう言われると
「今の4倍か〜、そりゃエネルギー足りないわなあ」って思うよね。
けど、その後、講義はこう続くんだ。
(講義の動画 17:57〜)
「これは私が先程言ったより、ゆっくりとした評価ですが」
「先程今の3倍4倍になるよと言ったけれども、それほどではないかもしれんけど」
って????
動画だとパワーポイントがよく見えないので、引用してる資料を探して見つけたよ。
原子力委員会 第9回新大綱策定会議 アジア/世界の長期エネルギー需給見通し より
この予測にどの程度信憑性があるのかはわからないけど
原子力委員会で使われた資料だから
少なくとも将来のエネルギー消費を楽観的に見積もったものとは思えない。
右上の世界の推移の欄に「1.5倍増」とある。
全然「4倍」じゃないじゃん!
最初からこの資料を引用して話せばいいのにね。
有馬先生、それでも
「世界平均をするとエネルギーが今の2倍以上になるってことが
これでおわかりになる」
だから「1.5倍」だって!
少しでもエネルギー消費が増えることにしたいのかなあ。
【地球温暖化問題】
(講義の動画 39:22〜)
「世界の50%が人間が住めなくなる」
「生存可能な人間は10億人以下。産業革命以前の人口に戻る」
そりゃ破滅だよね。不安にもなるよねえ。
出典はなんだろうとネットで調べてみたんだけど、見つからない。
同様な見解、予測も見当たらないんですよ(僕のリサーチ不足かもしれませんが)。
結局、行き着いた先はIPCC(気候変動に関する政府間パネル)で
IPCC第4次評価報告書(第5次は現在作成中なのでこれが最新)には
こうあります。
環境省 IPCC第4次評価報告書 第2作業部会報告書 概要 より
「気温の上昇が約2~3°C以上である場合には、すべての地域は正味の便益の減少か
正味のコストの増加のいずれかを被る可能性が非常に高い」だからね
有馬先生の言う「4℃上昇したら生存可能な人間は10億以下」
(今の世界の人口は70億だから60億減)
と比べると、かなりトーンが違うよね。
ま、ICPPは世界の見解だから
最大公約数的な無難なものになりがちだとは思うんだけど
そうは言っても「4℃上昇→人口10億」は、かなり極端な話に思えます。
そもそも、地球温暖化で4℃上昇するの?って疑問もあります。
それもIPCCによれば、以下の通り。
環境省 IPCC第4次評価報告書 第1作業部会報告書 概要 より
A1F1という「化石エネルギー源を重視した『高成長型社会シナリオ』」を
世界が選択した場合に
(要は20世紀同様のイケイケの大量消費社会を続けた場合ってことだよな)
21世紀末、世界の平均気温は4℃上昇する、と予測されるということです。
で、その場合も2.4〜6.4℃まで予測の振れ幅があるし
社会シナリオによっては1.1〜6.4℃まで更に予測の幅が広がっている。
何かすっごい、寄り道して勉強してるけど(笑)。
要は、有馬先生の言う「4℃上昇→人口10億」は
かなり最悪なケースなわけでしょ。
だいたい60億も人口減るんだったら『高成長型社会シナリオ』は続かないだろうし
21世紀末は化石燃料もかなり枯渇しているはずだしねえ。
もちろん、現状に警鐘を鳴らすのは悪いことではないと思うけど。
冷静に考えると、脅かしてない?という気がしてきます。
で、さっきの講義の動画を見てもわかるけど
実は有馬先生、最初に地球温暖化の根拠について話してたときは
IPCCの見解を引用してるんだよね。
パワーポイントにもそう書いてあります。
しかし、4℃上昇した世界について語るときには
IPCCではなく、色々な人の見解を引用してしています。
その時のパワーポイントです。
うーん。無理矢理寄せ集めた感がありません?
IPCCはどこ行ったの?
こう並べられると「4℃上昇→人口10億」は
専門家の間でかなりポピュラーな意見に見えるんだけど
実際はどうなんでしょうか? 誰か詳しい人、教えてください。
調べても出てこないし、温暖化の危機を強調するために
恣意的に引用しているように思えてくるんだよね。
【CO2削減のためには】
CO2排出も中国やインドでどんどん増えるというお話…
(講義の動画 40:49〜)
「我々が散々エネルギーを消費して散々CO2を出しておいて
後から来る国々に減らせとは言えない。
先進国がエネルギーの消費を減らし
CO2を出すのを減らしていかなければならない。
このためには何が重要かというと科学の力。技術の力を借りなきゃいけない」
「科学の力、技術の力」って要は原発って話なんだけど
有馬先生、そこまでは言わない。
けど、『エネルギー・原子力政策懇談会』の設立趣旨で、彼はこう書いている。
それはそれで1つの見識なんだから、はっきり言えばいいと思うんだけど。
そもそも、CO2の削減には原発が不可欠のように語られますけど
果たして本当なんでしょうか?
そう思いながら、上で紹介した
原子力委員会 第9回新大綱策定会議 アジア/世界の長期エネルギー需給見通し
を見てたら、面白いデータがありました。
この『技術進展ケース』というのが、どの程度の難易度なのかはわからないけど
「技術進展により世界のCO2排出量は2020年代にピークアウト」するんだからね。
その場合、世界全体のCO2削減量のなかで原子力によるものは14%だって。
日本の原発はさらにその内の何%でしょ。
大きな声じゃ言えないけど
日本が原発やめたって大勢に影響ないんじゃないの(笑)
もちろん、CO2削減は世界でどう取り組むかだし
「CO2排出削減に効果的な単一的な施策は存在しない」とも書いてあるから
『技術進展ケース』は原発利用とリンクしているのでしょう。
けど、少なくとも
「日本の原発ゼロ→世界4℃上昇→世界人口10億」ではないことがわかるよね。
【日本の再生可能エネルギー】
(講義の動画 55:42〜)
「10年かけて日本はドイツの半分くらいの再生可能エネルギーしか得られない。
どうですか? これで間に合いますか?
30%の原子力を止めて5%しか10年間で出ない」
「10年かけて最大500億kWhでは残念」
有馬先生の言ってるのは『再生可能エネルギー固定価格買取制度』だと思うので
調べてみたんだけど
そんな縛りとか上限みたいなものは全然見当たらないんだよね。
再生可能エネルギーの固定価格買取制度について
なっとく!再生可能エネルギー トップページ
そこで、資源エネルギー庁 新エネルギー対策課に訊いてみると…
「2030年までに20%台までに再生可能エネルギーを普及させるという
枠組みはあるんですけど
これ以上普及させてはならない、これ以上買取れませんよ
という規定・制限はない。
『最大500億kWh』という数字については
何を元にそういう話をされているのかわからない」
うーん。有馬先生の話は何なのだろう。
大嘘? 勘違い?
何か他の制度や仕組みのことを言ってるのかなあ。
誰か教えてください!
ということで、長々と書いてきましたが、まだ半分もいってません(笑)
一旦まとめます。
有馬先生の話って、特に突っ込むつもりもなく流して聞いてると…
- 世界の人口は増え続けエネルギーは今の4倍必要になる
- 地球温暖化によって気温が4℃上昇すると世界の人口が10億人に減る
- 中国やインドなどの経済発展で世界のCO2排出量は増え続ける
- 日本の再生可能エネルギーは10年で5%のシェア増にしかならない
⇒ やっぱり原発は必要かな… という気になるよね
けど、ちょっと冷静になって、気になったところを調べてみると…
- 世界のエネルギー消費は1.5倍増
- 地球温暖化による気温上昇は複数の予測シナリオがあり+4℃はそのうちの1つ
- 技術進展により世界のCO2排出量は2020年代に減少に転じる予測もある
- 日本の再生可能エネルギー固定価格買取制度には普及を抑える制限や規定はない
全然違うよ!
もちろん楽観は禁物だし、脱原発で無問題なんて全然思わないけど。
有馬先生は誘導しているような気がするなあ。原発推進に。
自然とそうなってしまうのはしょうがないと思うんだけど
今回講義を見返してみて
もしかしたら十分意識して計算して
プレゼンしてるんじゃないかって気がしてきましたよ。
どう思います?
というわけで、続きます。