チャンネルJのJはJapanのJ?JournalistのJ?

旧タイトル「労働組合ひとり」。チャンネルJという朝日新聞OBが作った原発ムラの末端の末端くらいの会社で、ひとりで労働組合に入って活動してたら解雇されました。もともと労働組合を通して会社と戦う話のつもりだったのですが、紆余曲折ありまして。。。あくまで原発問題は脇筋です。ただ、天下国家を偉そうに語る連中の姑息なインチキがムカつくので、今も盾突いてます。

日本学術会議だぜ

こんなのに行ってきました。



よくよく見るとすごいメンツでしょ。
国会、政府、民間それぞれの事故調の委員長が揃い踏みで。
何と山下俊一先生まで! 夢のオールスター戦じゃないの。



撮影禁止だったんだけど、ちっちゃなカメラで記録のつもりで
動画も撮ってしまいまして(笑)
全部撮ってないし、人目を憚りつつ(チキン!)なので中途半端な代物ですが
アップして、印象的な発言をメモ替わりに書き留めておこうと思います。


まだ日本学術会議のトップページに載ってるし
動画配信もされて、配布資料もアップロードされてるので
ちゃんと見たい方はそちらをどうぞ。




【報告・討論(第1部)国会事故調】


まず、黒川委員長から30分くらいの報告だったんだけど
委員会運営に関する苦労話や裏話的なエピソードを中心に語られて
国会事故調は、黒川さんがかなり主導的な役割を果たして
できたものだということがわかりました。
そこから討論という名の、緩くて短いパネルディスカッションめいたもの。
黒川委員長と山下先生とのスリリングな絡みなんて全然無し!(そりゃそうか)



黒川委員長の発言抜粋


11:48〜
「日本は、ほとんど行政府が政策作って自分たちでやってる。しかも年功序列。入省年次で上がってくるなんて馬鹿げてる。立法府のガバナンスが全く効いてないということ。たまたま戦後の日本が冷戦と日米安保の枠組みで成長していたから、みんな何も思わなかったけど、明らかに発展途上国のモデル。冷戦が終わってインターネットが広がり、めちゃめちゃになって、経済成長しなくなったのは、その都度その都度、責任を回避しようというマインドセットが、責任ある人にずっとあったんじゃないか」


14:21〜
「例えば同じような事故が北海道、他の電力会社で起こったらどうなる? 働いてる人が遥かに少ない。中央とも近くない。東電清水社長を呼んだとき『本当に福島第一は免震棟があったので助かったと思います』とあれだけ言っていたのに、今度の(大飯原発)再稼働には免震棟があるのか? 複数の逃げ道があるのか? 原子力基本法を見ればわかるように、事故が起こらないという建前でやっている」


15:37〜
「今回明らかにわかったのは現場の人は強い。上に行くほどダメになっていくというのが、日本の政府であり、大企業であり、学者、科学者コミュニティもそうか、大学もそうかは知りませんけど、そういう風に外では見られたんじゃないか。専門家という人がテレビに出てくると、枝野官房長官以上のことは言ってないのは明らかだった」


山下先生絡みでは、会場からの質問で、薬害エイズ血友病患者だと言う男性が
「なぜ山下先生を参考人聴取しなかったのか?」(23:53〜)と問い
それに対して黒川さんが答え(30:23〜)
休憩時間にその男性が山下先生にアプローチして
主催者と口論になっておりました(35:05〜)
別の休憩時間にも、山下先生は、他の観客から福島のことで問い詰められてました。
薬害エイズのことは全然知らないので安直な感想になってしまいますが
どこに行っても責められているんだろうなあと
ちょっとかわいそうになってしまいました…
山下先生はずっとおとなしい小声の反応で
彼が内心どんな思いでいるかはわかりませんが
無用な摩擦は起こさないように内向きになるでしょうね。。。




【報告・討論(第2部)政府事故調】



畑村委員長の発言抜粋


00:13〜 
「事故調査に責任追及が無いのはおかしいと思い込んでる人がたくさんいるが、私はそうは思わない」


01:32〜
「強制力を持った調査権が必要とは考えなかった。不都合も無かった」


まずは『失敗学』のポリシー。
次いで、政府事故調の特徴である『委員長所感』について。


一般論にすると禅問答みたいな言葉になっちゃうんだけど
事故に対する具体的な話は結構ダイレクトで面白い。
畑村さん、日本は原発やめたほうがいいんじゃないかって認めちゃってるし。


03:35〜
「原子力安全委員会は1993年に長時間の全電源喪失を考えなくてよいと明文化している。何でこんなことを平気で言ったんだろうと不思議で仕方がない」


05:50〜
「6m弱の津波までで、それから先は考えていない。実際に来た津波は14〜15m。2.5倍のことが事実として起こったのに、それを考えなくてよかった訳はない。実際に起こったときの説明は全部『想定外』。見たくないものが見えないから」


07:41〜
「世界のあっちもこっちも、洪水もあったり色んなことが起こっている。全電源喪失が台湾でも起こっていたのに、日本中がみんなで考えないようにして、知らなかったという格好が明らかになってくるのは、とても変」


08:26〜
「防潮堤を作るのはものすごくお金がかかると言う。しかし、本当に津波対策で必要最小限だったものは他にある。可搬式の電源と可搬式のコンプレッサーがあって、接続の準備がきちっとしてあれば、こんなに酷いことにはならないで済んだ。コストの説明に逃げ込んで、本当のことを考えようとしないで一見判った風になっている私たちがいる」


09:35〜
「危険の存在を認めていないので、原子力の防災マニュアルがきちんとしていない。訓練がちゃんと行われていない。みんな『訓練はちゃんとやっていた』と説明するが、それは嘘。嘘という言い方をきちんとしないのがいけない。訓練が役に立ったと言う現地の人は一人もいない」


17:55〜
「複合災害ということを考えなきゃいけないのに、全くされていない。1号炉から4号炉まで直列につないでいる。1号炉から4号炉のどれか1つダメになったら、隣の炉への対応がとれなくなると考えられている風に見えない。4号炉が吹っ飛んだのは3号炉から水素が行ったのではないか。隣に繋がるところがあるかもしれないと誰も考えないから起こる。1号炉、2号炉、3号炉、どれかが一つ吹っ飛ぶと、それまで放水用のポンプを入れて注入しようとしていたものが全てダメになってまたやり直しになる。設計の問題といっしょに工程管理の問題もひっくるめて、もともと、サイトのなかにどのくらいの数の原子炉をどのくらいの間隔で置いたらいいかという、基本に関わるところ。誰も考えていないか、途中で気がついても、もう動かせないから考えなくなってしまったのではないか。こういうのは事故調(報告書)には書いていません。こういうことを言うときは個人的見解だと断って言ってくれと言われている。でも、個人的見解を言わないと学んだことにならない」


21:24〜
「(Q.日本は原子力発電をやっていける能力がないのでは?)今おっしゃった通りに感じています。テロの話が出てくると、みんなテロの話になる。スリーマイルで学んだのは人間の判断は間違えるということ。チェルノブイリでは、方式自身が発散型になったときには止めようもないこともあるという、“型”自身の危なさ。福島で学んでいるのは、自然では能書きの外側のことも起こる。自然災害を甘く見るな。テロだって簡単ではない。テロじゃなくてもいっぱいある。人間の悪意。悪意を持ってこういうものを扱おうとする。それがテロという一つの格好で起こる。テロのことばかりやってると、4つやってればいいで話になってしまう。そんなのおかしい。5つ目6つ目7つ目と考えて、どういうシナリオで何があるかということを真剣に考えて議論できるようにならないと、本当の意味での安全は進んでいかない」




【報告・討論(第3部)民間事故調】



北澤委員長の発言抜粋


02:21〜
「日本だけが安全神話『100%安全だ。だから改善などということはありえない』。文書に『安全性のための改善』などと書いてはならない。他の国は、スリーマイル、チェルノブイリ、9.11があって、どうリスクに対応すべきか色々取り入れた。世界に比べて、最後の最後の安全策、過酷事故が起きたらどうしたらいいのか、日本だけが対策ができていなかった」


03:49〜
「原子炉というのは人間がお手上げとなったら暴れだすモンスターであると、国民は知らされていたのだろうか?恐らくここに居られるほとんどのかたも知らされていないと思う」


06:35〜
「日本の原子炉は非常に過密に設置されている。過密に設置された原子炉の中に、さらに使用済み核燃料という、原子炉自身が持っている放射能よりももっとたくさんの放射能を持った燃料棒が蓄えられている。どれか一つの炉が事故を起こして放射能レベルが上がると隣の炉の措置ができなくなる。吉田(所長)さんが一人で現場の全ての面倒を見る。一人で6つの原子炉と7つの使用済み燃料プール全部に注意は行き届いていない」


12:33〜
「東電が全面撤退したいと言ったかどうかに関して、国会事故調とちょっと違った見方をしていますが、ヒアリングした人が違うということもある。真実はテレビ会議のビデオの中に隠されていると思う。丹念に見ていけばわかる」


20:55〜
「いずれ推進側に戻って行かないと老後の生活が…などと思ってる人が保安院長をやっていたら、ちゃんとした規制なんてできるわけがない。しかし、日本はそれが実情。自縄自縛状態というのは、残念なことには学術会議の会員のかなりの方々も含めて学会も陥っていたし、現在も陥っているかたがこの中にもたくさん居られると思う」


24:22〜
「アメリカでは原子力は完成した技術であるというコメントがありましたが、私はとんでもないと。原子炉というのは完全な未完成な部分であって、人間がお手上げと言ったら何故止まるようにできていないのか? それはフェイルセーフ(fail safe)の精神。工学ではお手上げのとき止まってくれるのが当たり前」


45:47〜
「教育は重要。推進側は大学に非常にアプローチをかける。私も東大の工学部にいたのでよくわかっている。私自身もいろいろな企業から委任経理金と呼ばれる寄付金を貰ったりする。原子力の関係者は圧倒的に多い。だいたい10倍くらい多いと言われている。推進側だけに大学が巻き込まれてしまっていると、大学の人たちが安全規制とか中立的な委員になれるか難しい」


58:28〜
「(55:54〜 Q.フェイルセーフができていないものは技術として諦めるのが、科学的な考え方ではないか?)きちんと対処しようとすると原子力を止めなくてはならないのではないか、再稼働が先なのか、対処してから再稼働するのか、に関して言うと、フィルター問題にしても免震棟にしても未だできない。その点から言えば、全てのことは対処されてはいない。ただ、可搬型の電源を持ってきたり、今までより電源を上のほうに上げるとか、ある部分の対処はやっている。イチかゼロかという話ではない。いろいろなことを話し合った上で、政府が『原発はこの程度は動かしますよ』ということは、どこかで決めざるをえない。もしも、何基か動かすということになると、どれを動かすのが一番安全なのかということは、我々科学者、技術者の意向は相当に強く出せると思うが、最終的に危険があっても何基動かすと我々が決めるわけにはいかない」


北澤氏もサラリと原子力に対して割と厳しいことを言ってる気がします。
ま、最後の原発再稼働についてのコメントは、尻つぼみな感じは否めませんが。
あと、学者、学会の責任について、3人の委員長の中では一番触れていましたね。




【総括討論‐事故報告書が明らかにしたものと今後の課題‐】


他のパネリストのスピーチみたいのがあって
内容的にも時間的にも全然「討論」になってませんでした。
3人の委員長の発言は以下の動画にあるだけ。



08:26〜
北澤「結局今回の事故は、もはやあの4つの原子炉はダメだと、いつ諦めることができたか。諦めたとしたら、やる手はあったと私は思っている。原子力工学の専門のかたに訊いても『いや、やっぱり無理だったんじゃないか』と言うかたもいるが、中身をちゃんと見ないとわからないので、正解は本当はわからないが、もう一度あの事故が起こったらどう食い止めるかというのは大きな問題。大きく言えば、誰がいつ諦めて最終的な手段をとるのか、最終的な手段というのは、有り余ってる水、海水を運んできて原子炉の中にぶち込んで、そうなると原子炉はダメになってしまうが、そういうことことをいつ決断し、原子炉がまだコントロールできるうちにやるというのが、楽観的に見てる間に、手遅れになった。3つも手遅れにしていまう日本の技術というのはどういうレベルなのかと海外から言われても何とも申し開きができない」


これは、吉田所長の判断・対応もベストじゃなかったということだよね
(もちろん吉田所長の責任と負担は大きすぎたんだろうけど)


10:20〜
北澤「失敗の本質ということで、第二次大戦の日本の状況と似ているのでないかというご質問がありました。いったい誰がその方向に向けて、日本は大丈夫だと突き進めているのか、見えない。ところが、みんなで突き進めてしまう。ブレーキをかけるとか、違う方向に向かうとか、そういうことを誰も言い出せない状況になっている」




というわけで、以上です。


期待外れでもあり、期待以上でもあり。
国会事故調は結構ウォッチしていて、今でもネットで観られるから
内容とか黒川委員長のキャラとかそれなりに知ることができるんだけど
政府事故調の畑村委員長と民間事故調の北澤委員長は
生のしゃべりをほとんど見たことがなかったから新鮮。
二人とも面白かったですよ。
黒川委員長よりも辛辣なんじゃないかって印象も受けました。
二人とも『創造性の育成塾』でも同じこと語ればいいのに。
科学について、これ以上のトピックは無いのにねえ。


ともすると、政府事故調と民間事故調は、国会事故調より軽視しがちですが
(けど3つの報告書全部読んでらんねえというのは現実としてあると思う)
マスコミ報道だけを通して、知った気になるのは良くないなあと改めて思いました。


そういう意味では非常に面白かったんだけど
だからこそ、もっと時間をとって本気で討論してほしかったですね。
だいたい、本気で発信するつもりなら平日の昼間にやるなよ。
客席、リタイアしているような年齢層のかたばっかりよ。
(その人たちが悪いんじゃないけどさ)
何だよ定員300名って。
メンツから言って日本武道館でやるくらいの集客能力はあると思うね。
東京ドームもその気になればいけるぜ。
3人の事故調委員長で全国ツアーやればいいのに。


僕にプロモーターやらせて。