チャンネルJのJはJapanのJ?JournalistのJ?

旧タイトル「労働組合ひとり」。チャンネルJという朝日新聞OBが作った原発ムラの末端の末端くらいの会社で、ひとりで労働組合に入って活動してたら解雇されました。もともと労働組合を通して会社と戦う話のつもりだったのですが、紆余曲折ありまして。。。あくまで原発問題は脇筋です。ただ、天下国家を偉そうに語る連中の姑息なインチキがムカつくので、今も盾突いてます。

国会事故調 清水正孝 前東京電力社長を見ると自分がマシに思えてくる


遅ればせながら「国会 東京電力福島原子力発電所事故調査委員会」
通称「国会事故調」に若干ハマっております。


だって、分かるんですよ。見てると。
とかゴマカシとか。
「ああ、この人、後世のためにホントのことを伝えようって気はないな」
とか。
参考人の人間性や覚悟みたいなものも伝わってくるし。


中継を見るだけでは飽き足らず、傍聴から、さらにエスカレート。
最後の参考人聴取となりそうな東電の清水前社長登場ってことで
報道関係者として(笑)ビデオカメラを持って行って来ました。
所属=フリーランス、媒体=インターネット で申請したら無問題。


せっかく撮ってきたので、一部まとめてみました。
いわゆる「東電撤退問題」のくだりです。
USTREAMで通しで見れば自ずと伝わる真実のようなものが、
編集したら、かえってわかりにくくなるかもしれませんが、ものは試しということで。


※肩書きは当時のものとします


委員会が用意した「東電撤退問題」に関するプレゼンテーション資料が示され
以下の2つの時系列の表に沿って質疑は行われました。


<東電の動き>


<清水社長から官邸への電話>


まずは<東電の動き>の最初から



発電所の状況がどんどん悪化し
清水社長の口から「最悪のシナリオ」という言葉が発せられました。
「最悪のシナリオ」のなかには「全面撤退」も含まれ、
そのことを相談するために、武藤副社長 原子力・立地本部長に電話をかけたのでは、
という仮説が成り立ちます。
(露骨にそうは言いませんが)そういう筋立てで、国会事故調のエース・野村委員が質問します。



「最悪のシナリオ」をあくまで技術的な話に終始させる清水社長。
慎重に言葉を選んでいます。



出た。「記憶がはっきりいたしません」
大企業の社長と副社長の距離感や関係性が、どんなものなのかわかりませんが
野村委員の言ってるように
わざわざ通信状況の良い場所を選ばせ、手間をかけて電話したのであれば
それなりに大事な用件だろうし、記憶の隅にでも引っかかってると思うのですがねえ。


このあと、清水社長は官邸に電話を入れ始めます。
「最悪のシナリオ」について相談、報告するためだと思われます。




海江田経済産業大臣は、約3週間前に行われた国会事故調で、こう答えています。



社長本人から電話がかかってきて「退避を考えてる」って言われたら
「え?いなくなっちゃうの?」って感じですよね。フツー全員だと思うよね。
実は一部ですって、引っ掛け問題かよ!


いや、逆の立場で考えたほうがいいか。
あなたが、清水社長の立場で
一部を残して退避することを打診しなければならないとき
「一部」とか「最低限の人員を残して」と言わないことがあり得ます?
なるべく良いほうに飾って言ってしまうのが人間なのに
「逃げるのではない」と強調してしまいがちなのが人間なのに
「全員居なくなる、逃げる」と誤解されるようなことを言うはずないよね。


続いて、寺坂信昭 原子力安全・保安院長への電話について



万が一のシナリオとしても「全員退避」を完全否定。
「全員退避」を全く考えないほうが非人間的で不自然ではないでしょうか。
社員を見殺しにはできないという苦悩があったのなら、それはそれで重いことなのに。
言質をとられまいと身構えてしまって、とても頑なに見える。痛々しいほど。
そして、本当のことがますます見えなくなってる気がします。


その後、東電社内では「退避」に関する具体的な検討が始まり
「全員」「みんな」という言葉が飛び交い始めます。



※1F=福島第一原子力発電所 2F=福島第二原子力発電所



フェローって肩書き、立ち位置がよくわかりませんが、
高橋明男フェローは執行役員待遇で前柏崎刈羽原子力発電所長で
それなりの立場、知見を持っているかたのようです。
もしも、会社として「全員退避」を全く考えていないにもかかわらず
そんな人の口から「全員の…退避」「みんな…避難」という言葉が発せされたのなら
明確に訂正し、方針を共有しようとするでしょう。
何なのでしょう「牽制」って?
もしかしたら、TV会議では記録に残るので本当のことは言っちゃいけなかったとか。
それを「全員…退避」とか言っちゃったものだから、目で牽制したとか。
まさかとは思いますけど…


20:20のTV会議での清水社長の発言も
「最終避難(=全員避難)について、然るべきところ(=官邸)と確認をしている」
と読めますよね。


実際、その頃、清水社長は海江田大臣に何度も電話を入れています。




「記憶が薄れてしまってる」「認識を持ち合わせてない」…
秘書官にかかってきた電話の記録が残っているわけでしょ。
結局、大臣とは話せなかったとは言え
自分から8回も電話をかけたことを憶えてないなんて、あり得ないと思うのです。


深夜になり、再び発電所の状況は悪化していきます。



これに呼応するように、清水社長は官邸にまた電話を入れ始めます。



野村委員もさすがにイラついてきましたね。
海江田大臣も
清水社長と電話で話したのは1回か2回で、どちらかはっきりとは憶えていない
と言ってるので(トホホ)、真相は薮の中ですが
少なくとも秘書官に電話をかけて、それなりの時間通話した記録が残ってるんでしょ。
危機的な状況で、夜中に大臣宛に電話をするって
相当、心に刻み付けられる行為だと思うのですけど
本人が「記憶から蘇ってきてない」と言うのは、どうなんでしょう。


次いで、枝野官房長官への電話。
約2週間前に行われた国会事故調で、枝野長官は次のように答えています。



これに対して、清水社長は



「私の記憶が、官房長官に電話を申し上げたというのが、どうしても蘇ってきておりません」
「どうしても、そこは記憶がない」
え〜っ!
これって
『枝野長官に電話したこと自体を記憶していない』
そういうことですよね。
聞いてて衝撃を受けました。


何なのでしょうか?
マジで、自分は心神を喪失していた、病気だった、ということなのでしょうか?
人間って、自分の都合のいいように、記憶を修正してしまうところがありますが
嘘をつく努力すら放棄してはいませんか。
いや、もっと恐ろしい、破壊的な嘘をついたということなのでしょうか。


「ちょっといいですか」と割って入ったのは黒川委員長です。



黒川委員長は気を遣って話しているので、あまり嫌味が嫌味として通じてませんが
清水社長の答弁を聞いて
「ちょっと酷いんじゃないの」と誰もが思ったということだと思います。

それは、委員会後の記者会見からも伺えました。



宣誓して(under oath)やったほうがいいんじゃないのという外国人記者の指摘。
「記憶に無い」の連発は、国境を越えて不信感を買っております。



黒川委員長が記者会見でよく言う台詞が
「それはみなさんで判断してください」。
「われわれはjudgeはしない。factを提示したい」
ということもよく言われます。


だから、東電撤退問題も
「清水社長の言ってることはおかしい。全員撤退を考えたに違いない」
というのはjudgeであります。
factベースで考える国会事故調の認識は次のようになります。

今回の事故にあたって、東京電力が、いわゆる「全員撤退」を決定した形跡は見受けられない。
したがって、今回の事故処理にあたって、菅総理が東京電力の全員撤退を阻止したと理解することはできない。


何か菅さんがかわいそうですが
証拠が無い以上、東京電力の「全員撤退」の企図は無かったことになり
論理的な帰結として、もともと無いものを阻止したことにはならないということです。


この件も含めて、翌日行われた国会事故調で現時点での論点整理(第2回)が配布されました。
結構、官邸サイドに厳しい内容になっていて
それを材料に、マスコミによっては(特に原発推進系)改めて激しく菅前総理を叩き
正直、違和感を覚えました。
全てのfactが残っているわけではなく
国会事故調の論点整理も、『限定的なfactから現時点で言えること』でしかないわけで
論点整理をそのまま真実であるかのように引用して、誰かを叩くのは、
怠慢か確信犯であり、国会事故調が望むものではないと思うのです。


最終の報告書がどんなものになるかは、わかりませんが、
evidenceの無いものは全部排除され
factのみで積み上げられたものが、真実に近いかというと
そうとも思えません。
かと言って、いちいち真実と思える妥当な線をjudgeをしてたら、キリがない。
だから、黒川委員長は見てる人(国民)にjudgeを委ねるのでしょう。


断片的なfact + judge ⇒ truth


だと思うんですよね。
英語のリアルなニュアンスも知らないで、勢いで書いてしまいましたが(笑)
皆さんも、未見のかたは「国会事故調」をアーカイブでご覧になったほうがいいですよ。
(って、僕も最近のしか見てないですけど)
面白いですよ。


まあ、もうすぐ(6月中)最終の報告書が出るんですけどね。